第1章 イントロダクション

以下のページには、『蒸気爆発野郎!』というゲームを楽しむためのルールが収録されています。このゲームを通じて、あなたは小説や映画などの(いわば押し着せの)キャラクターで語られる物語だけではなく、あなただけが得ることのできる唯一の物語を得ることができるでしょう! しかも、望むならばその楽しみはずっと続けることさえ出来るのです。

このゲームの所属するゲームの分野は『テーブルトークロールプレイングゲーム』と呼ばれています。テーブルトークロールプレイングゲームは、多くの場合TRPGと略されます。大事なことは、このゲームを楽しむには複数のゲーム参加者が必要である、ということです。残念ながらこのゲームは一人で楽しむことは出来ません。

総合インデックス
導入編インデックス
第1章 イントロダクション
ゲームの準備
プレイヤーとゲームマスター
『蒸気爆発野郎!』のセッション
第2章 蒸気爆発野郎!の世界へようこそ
『蒸気爆発野郎!』の世界と『熱い魂を持つ者』
蒸気の世界への誘い

ゲームの準備

『蒸気爆発野郎!』のゲームに参加するためには、この本と数枚の紙、鉛筆などの筆記用具、サイコロが幾つか、数人が食べたり飲んだりできるジャンクフードとドリンクの山などが必要です。サイコロは普通の6面体サイコロで、特に1の目が赤いものが良いでしょう。大きさは適当で構いませんが、10個くらいあると便利かもしれません。参加人数は最低2名ですが、ゲームをプレイして面白いのは4-5人でしょう。参加人数の上限は特に設定されていませんが、スムースなゲーム進行のためには8名程度が上限となるでしょう。もちろんゲームを実際に行うためにはそれだけの人数が収容できる部屋と、筆記用具を広げることのできるスペースが必要です。『蒸気爆発野郎!』のプレイは主に言葉を使ってコミュニケーションすることが必要になりますから、少しくらい声を出しても迷惑にならないスペースである必要があります。

特にサイコロを指定するのは、このゲームをプレイする際にはサイコロの1の目が特殊な意味を持っているため。視認性の良いサイコロはプレイに余計な負荷をかけないためにも必要だと思う。安いし。

とりあえず実際のゲームの進め方はターン制に統一する。『幕間』ってな言回しだとNOVAっぽいけどね。一日を4ターンに分けて、そのうち1ターンは睡眠に回すこと。午前、昼、午後、夜。1ターンは2フェイズ。2フェイズは場面に相当。地域を跨ぐ移動にも1フェイズ必要(『蒸気!』では舞台となる場所が限定されている。全員地図を持ってプレイのこと>地図も添付しないと)。睡眠が取れない場合には行動ロールに-4の修正。ちなみに2徹は不可能とする。>してもいいけど役に立たない、ということで。

えー、シーンによって矛盾が生じないようにプレイヤーが場面演出を考えること。勿論未来やら過去やらからの呼び込みの場合にはそのシーンが矛盾を生じない限り、きちんと処理すること。「説明できるのであればゲーム世界的には成立する」のが『蒸気!』のお約束。これは『説明原則』と呼ばれる。

プレイヤーとゲームマスター

『蒸気爆発野郎!』のゲームにおける最低参加人数は2名です。『蒸気爆発野郎!』は一人以上の(一般的な)プレイヤーと、一人のゲームマスターという特別なプレイヤーを必要とします。プレイヤーもゲームマスターも『蒸気爆発野郎!』をプレイするためには必須です。あなたがどちらを選んでも十分な楽しみを得ることができます。

プレイヤーは『蒸気爆発野郎!』の世界に生きている最低限1名(多くの場合は複数名)の架空のキャラクターを作成します。そしてそのキャラクターの担当者としてキャラクターの演出を行います。演出には、キャラクターが直面する事態に対する様々な判断を下すことや、キャラクターの行動を宣言することも含まれます。そのキャラクターらしく架空の世界での行動を選択する必要もあるでしょう。プレイヤーとなったあなたは、他のプレイヤーや、ゲームマスターと協力しながらゲームを進行させることで楽しみを得ます。『蒸気爆発野郎!』ではプレイヤーが担当するキャラクターを演出することがゲームを進行させるための重要な役割を持ちます。

もしもあなたがゲームマスターとなることを選んだならば、プレイヤーでは決して得ることのできない楽しみを得ることができるでしょう。ゲームマスターはゲームの管理者であり、レフェリーのような存在です。ゲームマスターはまたゲームの真の進行役でもあります。ゲームマスターは、ゲーム中の場面転換を管理し、プレイヤーの扱うキャラクターの見たり聞いたり感じたりできるあらゆる場面を説明し、プレイヤーの扱うキャラクター以外の全てのキャラクターとして発言します。舞台でいえば演出、大道具、小道具、エキストラ役を兼ねたような存在です。これだけ聞くと大変な仕事のように思えますが、楽しみは人一倍です。

ゲームマスターは実際にゲームをプレイする前に、『シナリオ』と呼ばれる「ゲームの素地」を準備する必要があります。しかしこれはゲームマスターにしか許されていない仕事です。ゲームマスターは自由に世界を構築し、演出することのできる特権的な存在です。ゲームマスターは、自分の設定した世界の中で、プレイヤーの扱うキャラクターが、どのような反応をするかを見たり、自分がシナリオで設定したゴールに、どのように自然な形でプレイヤーを誘導するかという独特の楽しみを持っています。これはもちろん毎回巧くいくとは限りません。しかし、キャラクターの演出を担当しているプレイヤー達と共同戦線を張ることで、何らかのエピソードがリアルタイムに組み上げられていくという楽しみを得ることができます。このように、リアルタイムでエピソードが積み重ねられていくゲーム展開の形式を、このゲームでは「リアルタイムレンダリング形式」と呼ぶことにします。

ここで語られた方式は、自己組織化するというような意味を含んでいます。TRPGって構造的に自己組織化する物語システムでもある訳で。勿論物語が目的な訳ではなくて、単に遊びとして成立していて面白ければいい訳ではありますが。

ゲームマスターを比較的楽にしようという目的のために組まれたのが「時限ターン制進行」と「呼び込み」と「説明原則」。プレイヤーは自分のキャラクターのことは自分で把握しないとならないので少しキツいかもしれない。でもまぁ、それくらいは勘弁して下さい。「時限ターン制進行」についてはデザイナーがコンベンションなどで良く使う方式。これで「お地蔵さん」現象も少しは解消できる。だって、強制的にターンが進むんだもの。

もちろんPCの登場しないシーンを、それぞれのターンの中で演出しちゃってもオッケー。特撮などで良くある、敵側の「どうだ我が計画の進行具合は」とかをやっちゃってオッケー。プレイヤーはキャラクターでは無いので、そのようなシーンを見ても「有利な情報」として扱うことのなきよう。あくまでも演出として。このようなシーンを許可しないと、「敵側からの呼び込み判定」もやりづらい。これはNOVA-R以降のRPGなら可能になっていないとね、という側面もアリ。

『蒸気爆発野郎!』のセッション

実際の『蒸気爆発野郎!』のゲームは、ゲームマスターが準備した世界の中で、プレイヤーが自分の操るキャラクターとして振る舞ったり、そのキャラクターが経験する運命を演出するなどの介入を行ったりすることで進行します。このようなゲームの一回一回のプレイを『セッション』と呼びます。『蒸気爆発野郎!』のセッションは、短いもので2時間程度の時間を必要とします。長いものになると一晩かかるものも珍しくありません。

セッションの長さは、ゲームマスターの準備した『シナリオ』によって左右されます。もちろん、ゲームの進行状況によってシナリオは随時変更されます。それが『蒸気爆発野郎!』のセッションの醍醐味でもあります。プレイヤーの操るキャラクターがどう動くかによって、リアルタイムで状況は変更され、その変更された状況に従ってマスターは状況を語るのです。その語られた状況は再びプレイヤーがキャラクターを演出するための材料になります。そのようにして『蒸気爆発野郎!』セッションはシナリオの最後まで「リアルタイムに組み上げられる」のです。

ダイスロールはオープンダイス(サイコロの値をゲーム参加者が一切隠さない)、ルールは全て公平に適用、というのが『蒸気爆発野郎!』の基本的なプレイスタイルです。また、プレイヤーによる状況演出が過剰に行われますから、マスターはシナリオは細かい部分まで作れないというのが現実です。セッションの内容は、それぞれのプレイヤーの演出するキャラクターと、マスターの演出するNPCとの行動規範を参考にしながら、その場で解釈されるという『リアルタイムレンダリング』という方法を取ります(むしろ取らざるを得ないというのが現実です)。この「リアルタイムレンダリング」とは3Dグラフィックシステムで用いられる用語の転用です。